「コトバ」という概念2009-08-16 Sun 00:07
たまにはちょいと真面目な事でも。
僕の職業は声優。 声優とは、『声』の俳優。 人によってスタンス、やることに多少の差異はあれど、基本的にはマイク前で声を使ってお仕事をしているわけです。 さて、「声を使う」ということは、なんらかの言葉を発しているわけです。 基本的には日本語。 人によってしゃべれる人は、英語をはじめ様々な国々の言語。 たまーに『鳴き声』みたいなモノもあったりするのですべてがそうではないんですが、通常はコトバを喋っているわけで。 当たり前に喋ってますけど、この「コトバ」って。 なにげにすごいと思いません? 水なら水、スイカならスイカでなんでもいいんですが、とにかくほとんどのものに名前がついているわけですよ。 名前がついていてそれが世間に浸透している、という事実。 コレがよく考えると実はすごいことだと思うのです。 だって「えー!お前『水』しらないの!?」ってことないじゃないですかw 現在のように情報が様々な媒体を通して伝えられる時代にならわかるんですが、遥か昔、そういったモノがない頃からきっと、「水」は「水」だったと思うのですよ。 江戸時代でも、平安時代でも、言葉があった頃にはきっと、水は水なんです。 物語を作ったりする上で時代考証なんてこともしなければならないこともあるわけですが、江戸時代に 『親分!チャンスですぜ!』はマズくても、 『水ってこの時代ホントに「水」って言ってたか!?』 なんてことは会議しないと思うんですよねー。 てことは、少なくとも文字が生み出された頃には名前がついていたということなわけで。 遡ればきっと、「水がまだ『水』とは呼ばれなかった時代」もあるとは思うんですが、気になるのは「いちばんはじめに『水』っつったヤツ」なのですよ。 どこの誰かは知らないけれど、まだ情報伝達のノウハウもなんもない頃に「水」と名前がつけられ、それが全国に広がっていったわけですよ。 これが……なんともすごいことだと思うのです。 今は「水」を例に挙げて話してますが、他のいろんなありふれたモノにも一番はじめに名前をつけた人はいるはずで。 モノどころか「空気」みたいな目には見えないものにも名前がついているのです。 それが、どういう経緯で定着するのかはわかりませんけど、いつしか誰しもが、それを見て感じて、同じ名称で呼ぶようになるわけです。 星や化学物質みたいに、近年になって見つかったものとかは発見者が名前をつけられたり、場合によっては発見した人の名前から名前がつけられたりしてるわけで、そういったものとはまた意味合いが違うんですが、この「ありふれたモノにつけられた名前」って、当たり前に使ってるけど実は本当にすごいことなんじゃないかと思います。 そして、そういった名も知らない人たちがつけた「当たり前のコトバ」を使って僕らは仕事をしているわけで。 昔僕が教えてもらってた師匠に アニメは一人で作ってるんじゃない。 でも昨今は声優が取り沙汰されやすく、また人気も出やすいのが現状だ。 キミたちはたまたま目立つところで働いているだけで、他の仕事で携わってる人たち、例えば絵を描いてる人ととなんら変わらない「命を吹き込む仕事」をしているだけ。 だから、この中で人気の出る声優になった人がいたら、アニメの絵を書いてるスタジオに菓子折りの一つでも持って行ってください。 といったようなことを教えられたことがあります。 自分がそこまで「人気の出た」声優だとはカケラも思いませんが、それでも昔よりも名前が世間に知っていただけてる今でも、ホントにそうだなーと思います。 感謝をし出すとキリはありませんが、僕たちが使う一番といっても差し支えない商売道具「コトバ」を作った人にも、感謝したいですね。 当たり前を、「すごい」と思える気持ちをいつまでも大切にしたいものです。 スポンサーサイト
考察
|
![]() |
| ホーム |
|