たのしかったこんガル2018-08-28 Tue 00:12
大盛況のうちに幕を閉じた、劇団東京都鈴木区第17回公演『魂殻少女』。
一回感想書いたんでいっかなーと思ってたら「ネタバレしてもいい状態での感想期待してる」という謎の圧をかけられたので今一度今作を振り返ってみようと思います…とはいえおんなじこと書いてもアレなんで前回書いたのも含めて読んでいただけるとよいかと思います。 てかネタバレはしてないのにけっこう核心に迫ったこと言ってんだよね…不思議だw やはり今回一番大きいのは鈴木区が『悪』や『闇』といったネガティブな要素をストーリーに盛り込んできたところだと思います。 ポップに描いてたけどヒロインのナツメは鍵アカで愚痴ることを悪いと思っておらず、会社の方針で「SNSは禁止」と言われるのに「本名じゃないからOK」と続け、結果それが元で身バレ、炎上。 その炎上もスクープ狙いのネットニュース記者によって作られたもの…ここまでのことはないにしろ非常に身近なところにある闇ですよね。 また印象的だったのが自分たちのユニット『魂殻少女』がネット上で叩かれている書き込みを受け、周りは「みんな本気で言ってるわけじゃない」と言われるのに対し、自分の愚痴がマネージャーにバレたときには「ナツメちゃんが「あ」と書いたらそれは見る側にとって「あ」でしかない。どんな「あ」なのかは受けて側にはわからない」という話をされるんですよね。 これこそがインターネット、SNSの一番怖いところだと思います…文字だけだと感情が伝わらないから相手がどんなテンションで言ってるのかわからない。 同じことを書いても文字からは感情が想像できないから違う捉え方をする人もいる、ということ。 僕も長々ブログをやってる身なので非常によくわかりますし、特にTwitterなどの文字数制限があるものはその感情のヒントになるであろう文字そのものの数が減るので余計に難しくなります。 現代社会が抱える問題みたいなものに切り込んだな〜、と感じました。 そしてもう一つ、チラシにも書いてあった「私が私であることが私を邪魔するなら私は私が私じゃなくても私はそんな私でいいや」という文言。 一見して思うのはやはり「私多いなw」ではありますが、要はそれこそが本テーマ。 『私』というものをどこでどう認識し、どうあるべきか。 周りの叩いている言葉は「本心じゃない」のに、自分は愚痴を「本心で」書いている。 でも同じネット上にある言葉であることに変わりはなく、じゃあ自分のこの愚痴ももしかしたら本心じゃないのかも?だったら私って何? そこにさらに3人いた写真を加工することでファンと2ショットで写っている写真を作られ炎上。 実際には違う自分が他人によって世間に拡散される恐怖。一体”私”ってなんなんだろう…? そしてそこからのVチューバー。 姿も声もなにもかも自分じゃない状態のものの方が、自分自身で表現をしていたアイドルよりも評価をされる現実。 人気が出たことで叩くヤツも出てくるけど、自分なんだけど自分じゃないものだから何も感じない…終始『私』という価値観を描いている作品だったな、と思いました。 とストーリーに関してはこんなところですかw やっぱり今作で印象的なのはアイドル!魂殻少女の歌のシーンですよね。あとVチューバー「コイ=ツナギ」のシーンね! 『先輩、服を着てください』のときにOPアクトみたいなのを入れる、ってなったときも「どうかしている」と思ったし仕上がってた感あったけど、今回は特に仕上がってんな…と思ったら、なんと今回はそこらへんのステージングをプロで振り付け等の仕事をなさってる方に依頼したんだそうで。 …そりゃプロクオリティになるよねw てか今回でいえばグーグルカメラもそうだけど、出てくるものすべてのクオリティが高い。 周りにマジでそれで食える、もしくは食ってるレベルの”ホンモノ”たちが創り上げてるんですよねー、言っちゃなんだけど100人入らない小屋芝居でやるクオリティじゃないw なんでしょ、例えるならコミケ会場にいるプロの漫画家みたいな。 明らかにクオリティも違うし壁サーだったりするんだけど、「コミケに参加し本を売ってる」という状況は他と変わらないわけで、でもレベルが段違い、みたいな。 ホント小屋で見るレベルの作品じゃないですよねー、このへんは乱歩奇譚で手に入れた部分も大きいのかもしれませんね。 あと忘れちゃならない鈴木区といえば個性豊かすぎるキャラクターたち。 喋り方のクセがすごい大家さん、いい声過ぎてなに言ってるかわからないカリスマヴォイストレーナー、やり手なんだろうけど周りをどんどんぶっ千切っていくかのようなプロデューサー、そして完全にタダモノじゃない感出すぎて人間なのかどうかも怪しいライブハウスの長w この辺がド頭から代わる代わる出てくるんですから…普通このテのキャラって1作品に一人いりゃいいと思うんですよ、畳み掛けて使ったらあかんw とまぁ闇も取り入れながらハチャメチャに笑いも取るという奇跡のバランスで物語が進んでいくんですよね。 ラストは正直あまりハッピーエンドとはいえない選択をすることになるのでとても考えさせられる部分もありつつ、でもライブなんかでエンタメとしてはハイクオリティなものを見せられるので、ゲネで見たあと「どうだった?」と聞かれたときになんて答えていいかわかんなかったんですよね。 「おもしろかった」というのは簡単なんだけど、この作品はそんな簡単な言葉じゃ表現できない、というか。 ストーリー、エンタメ性、コメディ、どの角度から答えるのかで表現が変わる感じっていうんでしょうか…なので僕が最初に言った答えは「よくできたお話だな」でした。 今思うとこの一言にすべてが集約されていたかもしれません…ホントよくできたお話だった。演出も含めてよくできてた。 なんとなくですが、役者も揃い、スタッフ陣も充実し、鈴木区が1ステージ上に上がったような感じがする今作でした。 次回公演は過去作『弁護士バイロン』と『いるわけないしっ!』が11月に上演予定。 どちらも一度見た作品だけど、今の鈴木智晴が演出したらどうなるのか…非常に楽しみです。 スポンサーサイト
鈴木区
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