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マジP!

間島淳司の日常をプロデュース!!

ものがたり

ここは、トカイの、はずれの、そのまたはずれ。
薄汚れた廃ビルの、裏手の、物置あたり。

そこに、ばあやはいた。

なんでそんなところにいるのか、なんでそんなところで始めたのか。
それは誰も知らない。誰にも言わない。
そこでばあやは、街の若者に”ごはん”を配給していた。

「最近の若いもんは元気がないからね!!」

元気いっぱいに、元気のない若者に、元気を出せと自分のつくった飯を食わせる。
ばあやのごはんは決して美味いものじゃなかったけど、何か、どこか懐かしくて。
僕は食後にもらえるコーヒー目当てで、よくばあやのところに顔を出していた。

「ばあやのメシはまずいなあ」

僕がそういうと、ばあやはなぜか嬉しそうに

「そうかい、そうかい」

と笑うのだ。




ある日。
風のうわさで「ばあやが死んだ」という話を聞いた。

なんだかぽっかり胸に穴が開いたような、そんな気分。
僕は物置に通うのをやめた。
ばあやがいなくなったなんて信じたくなかったんだと思う。
もしあそこに行って、飯も、コーヒーもなにもなかったら。
ばあやがいなくなったことを認めなきゃいけないじゃないか。



それからまた少しして。
なんとなく、ばあやのいたあの物置のあたりで、コーヒーが飲みたくなった。

少し離れたコンビニで、紙コップに入ってるお湯を入れて作るコーヒーと、巻き寿司とおにぎりを買って。
いつもの、ばあやのいたあの場所に向かう。

廃ビルに着いても人の声は聞こえない。
賑やかに若者に発破をかける、あの声が聞こえない。

やっぱり現実なんだな…なんて思いながら、物置の前へ。
開けた中には……ただの荷物。
物置としての役割を、普通に果たしてるただの物置。

なんとなく視線が落ちる。
なんとなく…寂しい。

「おや?君は……」

後ろから誰かの声。
びっくりして持っていたコーヒーを落としてしまう。
振り向くとそこには……おじいさん。
おじいさんはばあやの旦那さんらしい。つまりじいやだ。
じいやはあまり一見かけなかったけど、たまにばあやと一緒にいたんだ。

「ここも…すっかり人が集まらんくなったなぁ」

そういってどこか淋しげに笑うじいや。
たぶん一番寂しいのはじいやのはずだ。

「君もよく来てくれとったなぁ…でも…」

「そうじゃ、君にこれをあげよう」

手に持っていたモノから、何かを出して僕に渡してくる。
見覚えのあるソレから出てくる、琥珀色の液体。

「ばあさんの…これが好きで、来てくれてたんだろ?」

コップに淹れたコーヒーを差し出しながら、優しく笑うじいや。
それを受け取って飲んでみる。

…うん、あの味だ。
ごはんだってコーヒーだって美味くなかったけど、なんとなく来たくなる、この味。
この味と、ばあやが好きで、僕はここに来てたんだ。

「あの……これ!」

とっさに手に持っていたものを、じいやに渡す。

「これは…?」

「さっきコンビニで買った、寿司……美味くないだろうけど……」

「おぉ…そうかいそうかい」

ばあやとおんなじようなことを、おんなじような言い方でじいやが言う。
その場で渡した寿司を器用に巻いて、食べる。
コンビニで買ってきただけのものなのに、なんとも嬉しそうな顔で「うまい、うまい」なんて言いながら。

「わしは…この街が好きじゃな」

そういわれて、コーヒーを飲んだ時には我慢できたのに、僕はじいやの前で泣いてしまうのだ。



















……っていう夢を見ました。
じいやの最後のセリフ聞いて、めっちゃ泣くのを我慢して、それでも我慢出来なくて泣いてしまったところで目が覚めまして……
起き抜けから泣く一歩手前でw

なに、これ?w
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